おはようございます。
大阪泉佐野市の縁里庵かつもと鍼灸院です。
今日は新潟にある佐藤竹右衛門商店さんに見学に行きました。
日帰りで行ったのでなかなか大変でした。
日本で流通している高精製の艾はほとんどが新潟で作られていると言われています。
その中で大多数を占める佐藤さんの工場見学をさせていただいたのでご紹介させていただきます。
3月に行う灸頭鍼セミナーの灸頭鍼用の艾も佐藤さんの工場で作られた艾も入っています。
現在はまだ作られていないので、2月の中頃には作られるそうです。
出来立ての灸頭鍼艾をセミナーではご用意させていただきます。
佐藤竹右衛門商店とは?
私ども佐藤竹右衛門商店は、明治29年創業、昭和36年法人設立、現在に至っております。その間一貫して、新潟県上越の地で国産最高品質の直接灸用モグサをはじめとする各種の灸用モグサを製造してまいりました。 しかしながら高度経済成長以降の現代社会の生活においては、日常的にお灸に親しむ機会が大きく減り、このままではこれまで継承してきた日本の優れた製造技術も途絶え、良質な国産のモグサを提供できなくなる恐れも出てきております。これは一つの日本文化の危機であると、真剣に懸念するところです。 少しでも多くの皆様に「真に良質なモグサ」を知っていただき、親しんでいただく為に、誠心誠意努力してまいる所存でございます。そして、それが日本のお灸文化再生の一助となれば、これに勝る喜びはありません。
有限会社 佐藤竹右衛門商店
引用元:佐藤竹右衛門商店
〒949-1602 新潟県上越市名立区名立大町 1015-1
TEL:025-537-2523
FAX:025-537-2532
※お電話によるお問い合わせは8:00~17:00の間にお願いします
定休日:土曜日、日曜日、祝日
明治29年創業の佐藤竹右衛門商店さんに見学に行きました。
大阪から約5時間30分
朝7時に電車に乗り、帰りは22時になりました。
艾の工場見学
よもぎを採取して天日干しをしたものになります。
空気の通りの良いように昔ながらの保管方法になっています。
加熱乾燥をさせます。写真は出てきた所なので、熱感がありました。
天日干しでも水分がまだ残っているので、加熱乾燥で1%にしていきます。
外に出して長期間置いておくと水分が戻りますが冬場なら乾燥をしているので戻りにくいそうです。
見学した時はまだ暖かい日が続いていたので中国艾の製造がされていました。
1番臼、2番臼が稼働中で、職員さんが2番臼を2つ使っていました。
荒い艾を使う時は1番臼だけになるそうです。
高精製の艾(国産ヨモギ)は3番臼を使いますが見学した日は使われていませんでした。
2階にある臼から一階の長通しに自動で流れるようになっています。
職員さんと話し合い改善を繰り返していると言われていました。
長通しは艾の粉を落とすために行います。
手でもできると見せていただいた写真になります。
温灸用艾の工程はここまでになります。
高精製の艾はさらに工程が続きます。
長通しした艾はこのような感じです。
鍼灸院でもよく使われるもぐさですね。
高精製の艾も黄色ではなく、緑色になるそうです。
この後の唐箕(とうみ)で黄色くなるそうです。
唐箕(とうみ)になります。
今回は国産艾は製造していなかったので、稼働はしていなかったです。
写真では分かりづらいかもしれませんが竹を使って、佐藤社長が手作りしていると言われていました。
作ってくれる所がないから・・・ということです。
外から見ると隙間があるように見えますが、内側からだと隙間は見えないので、日光に当てて
隙間がどの程度あるのか調べるそうです。
高精製の艾を作る時に業界用語で”ゴマ”と呼ばれる黒いものを省きます。
実際に私が顕微鏡で艾を撮影したゴマありの艾とゴマなしの艾を貼っています。
ゴマがあると温度が上がるので、この段階で排除するそうです。
唐箕(とうみ)の後はさらに奥の部屋に行きます。
金網の大きさを場所で変えています。
最後は竹を使います。
最後は人の手で行います。
この段階でも紐のようなものが入っていたりするので、目で見て取り除くと言われていました。
高精製の艾は手間をかけて作られていることがわかりますね。
実際には何度かこの工程を繰り返し、ブレンドを行い灸頭鍼もぐさを作ったりします。
粘りが強い艾を混ぜるそうです。
艾の話し
中国と国産の艾の種類は同じ
しかし、中国産のよもぎの質は落ちる
佐藤社長の祖父が当時日本のよもぎを中国で育ててみると
1年目は凄く良いよもぎができた。
2年目は中国と同じよもぎになった。
よもぎはたぶん植物学的な種類ではなく、生えている土地の地質学的なものによって
作用されるのではないかと言われていました。
上越産のよもぎで止まっており、それ以上北上していない
製造は冬場に限る
本来な冬場は出稼ぎに行かないといけない。
地元で、艾製造を携わることで、労働力の供給でちょうどよかった。
昨年起こった能登半島の地震
地震のあったエリア
能登にお願いしていたよもぎ
オオヨモギではなく、普通のよもぎ
そのよもぎに関しては点灸用のもぐさは作れなかったそうです。
作ろうと思えば作れたみたいですが、葉裏の毛が少ないので効率が悪い。
上越産よもぎが知らない間にブランド化してしまい
使っている方々が香りが良いからだそうです。
艾の製造は1点に尽きます。
よもぎの葉肉の部分と裏の毛の部分をとにかく分ける
これに尽きるそうです。
もぐさはよもぎの毛の部分を強制的に絡めること。
言い方は悪いと言われていましたが、綿埃を作っているようなもみたいです。
いかに効率的に毛だけを集めて、綿埃を作っていくか?
だそうです。
艾のグレードは分けられた純度で変わります。
1番良い艾は毛だけを100%集める
その中でも絡みがしっかりした部分だけを残す。
そうすると安定して燃え続ける。毛の部分だけは燃焼温度が低く
点灸で使える。葉肉の部分が残ると燃焼温度が上がる。
艾の中に黒い粒が混ざっていると、燃やした時に”パキッ”という音が鳴り
温度が上がることがあるので、我々は外していく
業界用語では”ゴマ”と呼んでいるそうです。
北海道のよもぎ
昔あったという話を聞いたことがあるので、聞いてみました。
北海道のよもぎは昨年と今年入れてみたそうです。
めが細かい草だったが物自体は悪くない
点灸の1番良いもの
佐藤竹右衛門商店産では、純和灸特級と同程度のものが作れたそうです。
Q.新潟のもぐさと北海道のもぐさ
使い比べたら違いはありますか?
A.ねばりが違い、安定して作れるのは新潟のもぐさだそうです。
ねばりは絡みの良さと言って良いのか
糸状灸を作る時に捻りやすさが違う感覚があるとのことです。
よもぎの需要はある?ない?
よもぎの需要が高まっている。
今までは農業の合間に雑草を刈る時に一緒に刈って
乾燥させてお金にしていたのが今までの流れでしたが
余剰生産物というか片手間でできていた生産物だったのものが
メインの商品作物になることは、価格が別物の価格になる
これからは国産よもぎは高級的、嗜好品的なものになる。
お灸は中国産がメインになり、よほど香りや扱いやすさを考えて使う
こだわる方のみが国産もぐさを使われる形になると思う。
将来的になるのではなく、10年後には・・・という話ではなく
2年後、3年後はそうなっている可能性がある。
と思います。
原料の価格が問題になっていますが
そんなもんと比べ物にならないくらい上がる可能性があるそうです。
毎年2割値段が上がる可能性がある。
それでも原料のよもぎが減っている。
そういう現状と言われていました。
もぐさを作る段階でできる粉末は
国産のものはよもぎ茶に使われたり、発酵させて高級な作物の肥料にしたり
畜産の高級肥料にしたりするそうです。
粉末を作るだけなら、砕いて遠心分離機で作れば純度の高い粉末ができるが
艾を作る結果として、できるものなので
他業種の業者ならそんな手間をかけて乾燥なんかできないよ
と言われることを行なっている。
佐藤さんのように手間をかけて作る粉末と一気に乾燥させて、一気に砕いたよもぎの粉末では香りなど
全く違うと言われていました。
そう言った意味でも粉末の需要が増えている。
下手したら粉末を作るために艾を作るくらい(笑)
順序が逆になるくらい粉末の需要が増えている。
熟成艾は?
Q.熟成艾はどう思いますか?
長年保管していると水分や油が飛んでマイルドになると言われていますが。
A.よく言われていますが変わらないと思います。
油が飛ぶことはないと考えます。
年数が経って硬くなった艾は、布団を干すように
固い艾をほぐして、新聞紙の上に艾を置き天日で干すと
ふわふわに戻る
天日で干すと絡みが弱かった部分が落ちる
より安定して燃えるところだけが残る
それが”晒もぐさ”
3年晒もぐさと言われているものは
普通でも使えるもぐさをあえて保管して
繊維の脆かった硬くなった艾を天日で干して作る。
色は日光の影響で、白く戻ることがあるが
基本的に3年が良いと言われているのは
物理的な理由があるので、作用が変わることはない。
高精製の艾が作れるのは何%?
佐藤竹右衛門商店さんの点灸特級、上級、中級で伺いました。
特級は100キロで3%
上級は100キロで4〜5%
中級は100キロで6%
7%を超えると点灸としては使えない
それでは繊維が脆かったり、見た目は同じ黄色で、多少特級の方が白くて、上級、中級でも色合いが違う
色はアテにならなくて、酸化もする。
年月が経つほど黄色くはなるが質の違いではない
劣化しているものでもない。
表面についた油分が酸化しているのではないか。
香りが変わるわけでも、効能が変わるわけでもない。
まとめ
佐藤竹右衛門商店に見学に行かせてもらい
高精製の艾を作るのはこれから難しく、高価になると言われていました。
中国の艾なら1年中作ろうと思えば作れるそうです。
冬場に作るのも高精製の艾を作るためで温灸用のもぐさなら夏場に作っても問題はないと言われていました。
伺う前に工場見学の時間を聞いていると30分から1時間と聞いていましたが
実際は2時間も滞在させていただきました。
長々とありがとうございました。
もっと書くことはありましたが、最低限の文章でまとめさせていただきました。
また、行かせていただきたいと思います。
少し前に見学させていただいた小山忠次郎商店さんは佐藤さんの艾を使われていると言われていました。
普段使われている艾ももしかしたら佐藤さんで作られている艾かもしれませんね。
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