おはようございます。
大阪泉佐野市の縁里庵かつもと鍼灸院です。
今日は趣向を変えて一つのツボを色々な本を参考にしながら深堀していきたいと思います。
今回は不妊症の患者さんにはよく使う「三陰交」というツボをご紹介します。
三陰交(さんいんこう)
場所:ふくらはぎの内側で、骨の際にあります。 内くるぶしから上に3寸の場所です。
内くるぶしから指四本分上にあります。
骨際で押して痛みがある場合が多いです。
ネットで調べると三陰交というツボは妊婦さんには使わない方が良い
と書かれていることがあります。
古書の「銅人腧穴鍼灸図経」に三陰交にまつわる話が書かれていました。
南北朝時代(420~589年)宋の太子(後廃帝)はある時、1人の妊婦に遭遇した。
太子は医術に詳しかったため。その婦人を診察し、「お腹の子は女の子である」と言い
さらに名医の徐文伯にも診察させた。しかし、徐の診察では「一男一女」と言われた
それを聞いた太子は気短な性格からすぐに妊婦の腹を割いてどちらが正しいか確かめようとした。
そこで徐は「この婦人の三陰交に鍼をして手の合谷(ごうごく)に鍼をすれば胎児が降ります」
鍼をしたところ一男一女が降りてきた
それゆえこの書では「妊婦の三陰交に鍼はすべきではない」と書かれています。
今で考えたらありえないことをしていますが
その時代では常識だったのかもしれません。
しかし本当に三陰交は危ないのでしょうか?
現在医学的な目線と三陰交の効能をご紹介します。
三陰交の効能
・足の冷え
・生理痛
・生理不順
・子宮内膜炎
・更年期障害
などに効果的と言われています。
女性の悩みに効果が高いと言われているので「女三里」とも言われています。
これは足三里や手三里と言った万能のツボと言われているツボがありますが
三陰交も女性の疾患に効果が高いため万能のツボ「女三里」と言われています。
しかし、女性だけではなく
・膀胱炎
・前立腺炎
・前立腺肥大症
・遺精
・夢精
・早漏
などにも効果的と言われています。
男女ともに使った方が良いツボになります。
現在書物では
・産婦人科系(生理不順、生理痛、胎位不正、難産ほか)
・泌尿生殖器系(尿貯留、尿失禁、尿路感染ほか)
・その他(高血圧、ノイローゼ、脚気ほか)
に効果的と書かれています。
他の書物でも三陰交の効能は書かれていますので
そちらも数個紹介していきますね。
・足の冷えに効く。肝・腎の症状。灸の方が良い
この肝と腎は現在医学的な肝臓や腎臓ではなく
東洋医学的なものになり現在医学とはまた考え方が違います。
・もも、膝が冷えるのは脾・腎
足つぼを刺激したら内臓に効果があると聞いたことがあると思います。
ももや膝が冷えるのは東洋医学的な臓器が悪いとを教えてくれています。
・婦人科系疾患は三陰交に灸をする。5~7壮
1壮2壮というのは1回2回という意味で
米粒程度のお灸を5~7回行うと書かれています。
下の写真は米粒大とそれよりも少し小さな半米粒大になります。
・妊娠5か月目以降は毎日5~7壮の灸を左右に行う
子宮の収縮力が増し、分娩力がアップする。
子供の呼吸器系と内臓が丈夫になる。
・妊娠中の病気の予防。下肢の浮腫にも効果的
・三陰交は流産のツボ
また別の書籍では
・月経不順
・不妊症
・子宮内膜炎
・冷感症(冷え性)
・胎児の位置不正(逆子)
など婦人科系疾患によく使う
他にも
・下腹部膨張感
・腎炎
・膀胱炎
・足関節痛
・下肢麻痺
・脚気
・胃腸炎など
に効果的と書いています。
古書の「和漢三才図会」には『二十二種類の病を治す」と書いています。
三陰交の別名は「承命」または「太陰」と呼ぶ
先ほどの書籍では「女三里」と言われていましたが「承命」という名でも呼ばれている
と書かれています。
これは時代や国で呼ばれ方が変わり
書籍に残されているので
どちらも正しくて、どちらも間違っている
という感じだと思います。
そして、同じツボでも効能が書籍で変わるのは面白いですね。
この辺りは足つぼと同じで全てが正しいのではなく
本当に効果があるのか?
追試実験しないといけません。
安産と逆子改善のツボ
三陰交は安産と逆子改善のツボとして有名です。
一昔前は三陰交は妊娠中は使ってはいけない
と言われていましたが漢方医の石野信安先生が臨床を繰り返し
「安産のツボ」として紹介されています。
石野先生は医師で鍼灸、漢方をする先生で今は亡くなられています。
現在は安産に良いという評価をされている三陰交ですが
今回ご紹介した書物でも古い書籍では流産のツボ
と書かれていますが現在は「安産のツボ」と評価は変わってきています。
これは昔は鍼は太くお灸は大きな火傷をするお灸がほとんどで
今は鍼は細くなり大きな火傷をしないお灸になった
というのもあると思います。
石野先生は終戦後
逆子の治療でお灸を使う事がきっかけで
その後お灸をしていた患者さんの子供が安産になり
さらに生まれた子供が丈夫に育つことが気づきました。
また、「古い文献を参考に経験を重ねた結果妊娠五か月後以降からお灸を始めるように勧めています」
と書かれています。
毎日お灸をする事を勧めていて
壮数は
妊娠
5~6か月:7壮
7~8か月:14壮
9~10か月:21壮
と言われています。
しかし、なかなか今は家で本格的なお灸をしてもらえないので
せんねん灸をお勧めしています。
匂いなどが気にされないご家庭でしたら
棒灸などもおススメしています。
しかし棒灸の欠点は煙で、今は炭灸という煙の少ない棒灸も販売していますが
モグサを使った棒灸よりは値段は高くはなります。
逆子治し
逆子治しについては
先ほどご紹介した石野先生が1950年日本東洋医学会で症例を発表し有名になりました。
石野先生の発表は1949年1月以降
妊娠6か月~10か月までの20例に半米粒大(お米より少し大きい位)のお灸を三陰交に3~5壮1日1~2回行った結果
から「逆子は六か月の後半から七か月、八か月までには治しておくべきでありましょう。骨盤の中に頭が入る10か月になると治すのは難しくなります。」
「胎児の自己回転の研究に当たって、三陰交は見逃す事の出来ないツボである」
と発表されていました。
また、元東邦大学医学部産婦人科の林田和郎先生は三陰交への灸頭鍼を行い
584人中525人正常いになったと報告されています。
ただし、お灸でも治らない逆子もあります。
林田和郎先生によるとお灸で逆子が治らず、帝王切開で出産した例を見てみると
へその緒が首などに絡まっていたとの事です。
至陰(しいん)
場所:足の小指の爪の外側、生え際の角から一分(約3mm)に位置します。
中国では逆子の治療では至陰というツボを使います。
指先にあるツボで、熱さを感じるまで行います。
中国では1960年から約20年間数千例症例報告があるそうです。
縁里庵かつもと鍼灸院では日本と中国の症例から
逆子の治療には三陰交+至陰を使う事が多いです。
そのツボだけではなく、赤ちゃんが返りやすい身体の状態にさせて頂くために
全身施術をさせて頂いています。
まとめ
妊娠中の三陰交は鍼はよくはない
灸は5か月以降は安産と丈夫な赤ちゃんを育てる為にはおススメできる
婦人か疾患がとくに効果的で不妊症の方にもおススメできる
縁里庵かつもと鍼灸院ではせんねん灸アロマをよく使っていましたが
今回色々と調べていく中で棒灸を三陰交に使ってみようと思っています。
不妊施術から妊娠された患者さんに相談してみようと思います^^
不妊症や逆子でお困りの方は大阪泉佐野市の縁里庵かつもと鍼灸院までご相談ください。
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